模型10
ユニット折り紙で作るトーラス
(C200フラーレン)
ユニット折り紙の中で最も基本的な「薗部式」と呼ばれるユニット↓
300個を用いて、トーラス状のC_200(カーボンナノチューブがドーナツ状になった200個の炭素原子からなる架空の分子)を作りました。
以前に、別なユニットを240個を用いて下のようなモデルを作ったことがありましたが、今回は、よりポピュラーな薗部式ユニットを用いて、これよりも一回り大きいモデルを作ります。
薗部式ユニットを使ったユニット折り紙は良く知られており、ネットでも大変凝ったものや数千個のユニットを用いた巨大な作品を見ることができます。当然、C_200のモデルも作られているとは思いますが、とりあえずネットで公開されているものは見当たらなかったので、今回は若干数学的な解説も交えて作り方を紹介します。
ちなみに、正八面体、正二十面体、切頂二十面体に対応する、それぞれ12個、30個、90個のユニットを用いたモデルは、《数楽工作倶楽部》のページで紹介しています。特に、90個のユニットのモデルは、60個の炭素原子がボール状に連結したC_60フラーレンという実在する分子に対応します。
カーボンナノチューブは、基本的に6員環のみで構成され、蜂の巣状のシートを丸めて円筒形にしたものですが、この中に5員環や7員環が加わると円筒が歪み、ある種の条件が加わると一つの分子になります。ちなみに、C_60は12個の5員環と20個の6員環で構成されています。幾何学的には、分子を一つの多面体とみなし、分子を構成する原子を頂点、分子間の結合を辺、員環を面に対応させることができます。
C_60のモデルに対して、5員環の数をx、6員環の数をy、面の総数をFとすると次の関係が成り立ちます:
F = x + y
ここで、全ての面は他の面と辺を共有しているので、辺の総数をEとすると、
E = (5x + 6y) / 2
さらに、全ての頂点は異なる3つの面の頂点となっており、これが原子の個数に相当するため、頂点の総数をVとすると次が成り立ちます。
V = (5x + 6y) / 3 = 60
ここでオイラーの多面体定理:
V - E + F = 2
を用いて得られる連立方程式:
(5x + 6y) / 3 =60, 60 - (5x + 6y) / 2 + (x + y) = 2
を解くと、 次のように x と y の値が確定します:
x = 12, y = 20
薗部式のユニット折り紙で多面体を作る場合、一つのユニットが一本の辺に対応するため、
E = 60
が必要なユニットの枚数になります。
今回作成するC_200のモデルの場合、7員環の個数をzとすると、
F = x + y + z
E = (5x + 6y + 7z) / 2
V = (5x + 6y + 7z) / 3 = 200
オイラーの公式は、ドーナツに穴が1個空いているので、上記のものとは少し異なり
V - E + F =0
となります。これより、
F = 100, E = 300
となり、300個のユニットが必要なことがわかります。
さらに、連立方程式:
x + y + z = 100, (5x + 6y + 7z) / 3 = 200
より次の関係が得られます:
2 x + y = 100, x = z
これらの関係を満たす解はたくさんありますが、実現できるのは
x = z = 10, y = 80
の場合だそうです。
ちなみに、上で紹介した240個のユニットを用いたモデルの場合、x と y の数は次のようになります:
x = z = 10, y = 60
作り方
今回は、5員環を黒、7員環を赤、それ以外を銀色のユニットで作りました。
分かりやすいように、はじめから5員環、7員環を作っておきます。
7員環の周りに6員環を作ります。(ただし以下の工程では一旦一部の部品を取り除いています。)
7員環を次のようにつなぎ合わせます。これがドーナツの穴の一番狭い部分になります。
7員環の周りに6員環を組み立ててゆきます。5員環、7員環の周りには必ず6員環があります。
5員環は写真の位置に配置します。他の場所でも良い場合がありますが、いずれにしても対称性を考慮する必要があります。
残った銀色銀色の部品で6員環を作りながらドーナツをくみ上げてゆきます。
おまけ
エコクラフトバンドで編んだ同様のモデル(いずれ製作方法を紹介したいと思います。)