1990年代後半からは、これらの可溶性および膜結合型キノプロテイン・キノヘモプロテインの分子内および分子間電子伝達反応の解析も始めました。加えて、酢酸菌の細胞膜で活躍するtype III ADHおよびmGDH以外に、酢酸菌細胞膜で機能するキノプロテインの検索が進められ、グリセロール、ソルビトールに加えアラビトールやグルコン酸(生成物が5-ケトグルコン酸)にも反応性を有するグリセロール脱水素酵素(GLDH)やシキミ酸生成に利用できるキナ酸脱水素酵素(QDH)の存在が明らかとなりました。同時に、この時期になって、これらキノプロテイン・キノヘモプロテインの構造解析もスコット・マチュー先生(米・Washington Univ.)や広津建先生(大阪市立大)との共同で始まりました。それらの成果も、2000年代に入ってやっと出始め、type II ADHであるADH IIB(2002)、続いてADH IIG(2005)の構造が解かれました。また、現在、酢酸菌の膜酵素であるtype III ADHも後一歩のところまで来ています。
これらの研究は、極めて基礎的なものですが、sGDHや type II ADHのように、バイオセンサの開発に利用されているものや、酢酸菌の膜結合型キノプロテイン(GLDGやQDH)のように、それらを利用する酸化発酵での有用物質生産(5-ケトグルコン酸やシキミ酸)の応用に利用されているものもあります。
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