研究内容


当研究室では複雑系の理解における数理的基盤の開発を目指して、以下のようなテーマに取り組んでいます。

非平衡系におけるガラス的振る舞い:

自然界や人工システムに目を向けると、最適な状態へと至ることが困難な状況に陥っている系が数多く存在することに気づくと思います。このような系の数理的な理解はどのようなものになるでしょうか?統計物理学においては、構成素子の間にランダムなフラストレーションが存在する物質としてスピングラスが知られています。そして、簡単なスピングラスモデルは平衡状態において低温で多数の不規則な配置の一つに凍結し、また、ダイナミクスを見た時には遅い緩和が生じることが知られています。それでは、スピングラスの平衡状態を特徴づけるような数理が、構成素子の間の競合により平衡点への緩和が遅くなるような一般の現象にも応用できるでしょうか?当研究室ではこのような問題意識の下で、様々な「ガラス」的現象を特徴づける数理の解明に取り組んでいます。具体的な対象としては などを扱っています。

情報の経済学的価値:

古典的なミクロ経済学は市場における物々交換に基づいて財の価格と最適な配分が決まるメカニズムを扱っています。しかし、近年の情報技術の発展によって、物々交換が成り立たずコストなしに複製できるような、いわゆる情報財が現れてきています。情報財の価値が自動的に決まるような市場メカニズムは存在しないため、違法な複製による著作権侵害のような様々な問題を引き起こしています。当研究室では、情報に対する市場理論を構築することを遠くに見据えて、情報科学の側から情報の経済学を捉え直し、情報の価値に対する数理的理解の深化と体系化を目指しています。このような問題意識の下で、具体的には などを扱っています。