主な活動内容

1.山口県における高齢者心不全に対する多職種連携を介した心臓リハビリテーションの整備・推進
循環器病対策推進基本計画に則り県行政との連携のもと、急性期型基幹病院と回復期・慢性期型病院、かかりつけ医が密接な連携をとれるようにし、積極的に回復期早期からの心臓リハビリテーションを図る体制を構築します(図1)。
図1:山口県内の包括的心臓リハビリテーションの整備・推進(案)
2.心不全の病態解明および新たな心不全治療法の開発に関わる研究
器官病態内科学講座(第二内科)では、1)心筋筋小胞体膜上に存在する心筋型リアノジン受容体(RyR2)からの拡張期Ca2+漏出が心不全、致死的不整脈を発症すること、2)悪性高熱症の特効薬であるダントロレンは、RyR2にも特異的に結合しカルモジュリン結合親和性を高めることで4量体構造を安定化させ、Ca2+漏出を防ぎ心不全・致死的不整脈の発症を抑制すること(図2)、を報告してきた(Circulation 2000;102:2131-6., Circulation 2003;107:477-84., Circulation 2005;111:3400-10., Circulation 2008;117:762-72., J Am Coll Cardiol 2009;53:1993-2005, Circ Res 2010;106(8):1413-24., Communications biology 2020;3(1): 714-714., Circ: Arrhythmia and Electrophysiology 2022,)。本講座では、これらの独自の研究を発展させ、心不全・致死的不整脈治療の開発だけでなく、Ca2+制御による包括的な生活習慣病治療法の開発の推進も併せて行うことを目指す。
これらの基礎的な研究を発展させ、現在、2つの臨床研究を行っています。
(1)心不全を合併した難治性心室性頻拍症に対しするダントロレン静注の急性効果及び安全性を検討する『心疾患を有する心室頻拍症(VT)に対するダントロレンの安全確認試験』(ダントロレンVT試験;UMIN000004346、2010年~)
この研究の成果に関しては、Circ Arrhythm Electrophysiol.( 2022 Oct;15(10):e011220. doi: 10.1161/CIRCEP.122.011220.)に報告しました。
(2)慢性心不全患者(HFrEF)に対するダントロレン内服の慢性効果を検討する『慢性心不全患者におけるダントロレンの予後および心室性不整脈に与える効果と安全性を評価する多施設ランダム化2重盲検試験(SHO-IN TRIAL)』(UMIN00028766、2018年~)
図2:心筋型リアノジン受容体(RyR2)を標的とした新しい心不全・不整脈治療
3.さまざまな心疾患と心筋酸化ストレスの関係を明らかにする研究
私たちは、慢性心不全患者では、酸化ストレス(尿中8-OHdG濃度)が亢進していることを報告してきました(Eur J Heart Fail 2011, Circ J 2012)。慢性心不全の中でも、心サルコイドーシス患者では、尿中8-OHdG濃度が、より高値であることがわかってきました。日本循環器学会 心サルコイドーシスのガイドラインにおいて、尿中8-OHdG濃度が、心サルコイドーシスのバイオマーカーの一つとして記載されています。最近、尿中8-OHdG濃度は心サルコイドーシスの活動性評価や診断、予後予測、VTの機序解明に大変役に立つことを報告しています(Int J Cardiol 2015, Int J Cardiol 2016, Circ Cardiovasc Imaging 2017, Circ J 2019, Heart 2022)(図3)。
図3:心サルコイドーシスと酸化ストレスマーカー