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本学への寄付

山口県防府地域の社会変遷と古気候に着目した土砂・水災害史の編纂

2016年採択プロジェクト紹介(1)

プロジェクト名:山口県防府地域の社会変遷と古気候に着目した土砂・水災害史の編纂
研究代表者:鈴木 素之 教授(創成科学研究科(工))

概要を教えてください。

 本研究プロジェクトは、山口県防府地域を対象として、集落・社会インフラ・経済活動などの社会変遷と年降水量などの古気候データを取り込んだ『土砂・水災害発生年表』を作成し、それを地域社会に発信して地元の災害史への関心を呼び起こすとともに、「郷土愛」の重要性を認識させることを目標としています。また、編纂した土砂・水害史をもとにした『長期リスクマップ』によって確かな防災戦略を描き、それを地域社会に提案します。更に「時間防災学」研究プロジェクト等と連動して、歴史的タイムスパンから見て「安全・安心な場所は何処であるのか」を解き明かすことを目指します。

 本プロジェクトでは、「時間防災学」研究プロジェクトで作成した過去1000年間の『土砂災害発生年表』に社会変遷と古気候の知見を加え、防災学だけでなく人文社会学、気象学の見地から重層的な学術的価値をもつ災害年表に進化させることを目的としています。
また、山口県に残存する歴史資料を解読することによって、災害のローカル性が判明し、地域の成り立ちについて理解を深めながら、先人の自然観や安全意識を推察し、現在の人々の防災に役立てることも狙いとしています。

プロジェクトを計画しようと思ったきっかけは何ですか?

 中国地方は土砂災害が多く、例えば本研究の対象となっている防府地域では、皆さんの記憶に新しいと思いますが、平成21年7月21日に防府市で大規模な土石流災害が発生しました。平成2年も防府地域では土砂災害が発生しており、数10年に1回発生している状況です。土砂災害は「異常気象のせい」と片付けられやすいですが、実は、同じ場所で繰り返し発生している事が多いのです。そうしたこと解明することで、新たな防災、減殺対策に役立つと思い、本研究プロジェクトを計画しました。

具体的にどのようなことをするのですか

 樹木年輪セルロースに含まれる酸素同位体比を測定し、樹齢各年の相対湿度・年降水量を推定します。
 古気候の復元作業では、専門家の協力を得ながら進める予定です。気象データが取得できる年代まで遡り、降水量の観測値と推定値の相関を調べ、酸素同位体比による推定精度を検証します。

 推定された年間平均降水量は『土砂災害発生年表』に追加します。放射性炭素年代測定による土石流堆積物の形成年代、古文書の災害記事と照合し、本地域の古気候の復元精度を検討する予定です。

最後に一言お願いします。

 災害は、どこでも災害が起こるというわけではなく、地盤が弱いなど起こるべくして災害が起こっており、同じ様な場所で同じ様な災害が繰り返し起こるなど、地域によって特徴があります。例えば、この山の沢から20年に1度土石流が流れる。起こった土石流がどこまで到達したか知るなど、地域の災害の歴史を知ることによって防災に役立てる最も有効であると思っています。
 この度のプロジェクトでは、古くからその土地にどのような形で人が住んでいたかということを考えながら、災害について研究していく予定で、住民や学生を対象にした講演会も実施いたしますので、興味をもった方は是非ご参加ください。

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