山口学研究センター 山口学研究センター

本学への寄付

古代テクノポリス山口 ~その解明と地域資産創出を目指して~

2016年採択プロジェクト紹介(3)

プロジェクト名:古代テクノポリス山口 ~その解明と地域資産創出を目指して~
研究代表者:田中 晋作 教授(人文学部)

概要を教えてください。

 山口県域がもつ歴史、文化的特性というと、幕末・維新期や大内氏関係をイメージされることが多いですが、これに匹敵するもう一つの大きな特性があると私は思います。それは、山口県域が「古代テクノポリス山口」とも形容すべき、古代日本を代表する最先端鉱工業地域のひとつであったことです。銭貨の鋳造が長門鋳銭所(下関市)・周防鋳銭司(山口市)で行われ、東大寺盧舎那仏造立に使用された銅が長登銅山(美祢市)で採掘されました。このような古代国家における経済的基盤や宗教的人心掌握の根幹をなす事業が、政権の中枢がある畿内から遠く離れた山口県域を舞台に展開された背景には、当県域でなければならない必然性があってのことと考えられます。その実態解明が、本プロジェクトの第一の目的です。

 次に第二の目的は、各種研究、調査を学術研究の枠内にとどめるのではなく、地域・行政・大学の協働によって実施し、これにより地域力・住民力の醸成を図るとともに、その成果を活用することによって、地域創生、地域活性化のツールとなる「地域資産」の創出を目指すことです。例えば、周防鋳銭司跡・長門鋳銭所跡・長登銅山跡を核にした「日本遺産」への登録などがその具体的な目標となります。長登銅山跡は平成27年度から本格的な史跡整備を目指した調査がはじまっており、長門鋳銭所跡は奈良文化財研究所が木簡の釈読に参画しています。ここに、鋳銭司・陶地区総合調査の主たる対象となる周防鋳銭司跡での成果を加えることができれば、「日本遺産」への登録実現が十分視野に入ってくると考えています。

プロジェクトを計画しようと思ったきっかけは何ですか?

 私は関西の出身ですが、山口大学に赴任した時、山口県は古代に鉱工業がとても盛んであったことを知りました。
 当時、うちつづく災害や疫病、騒乱といった社会的不安の克服を仏教に求めました。そのために全国に国分寺・国分尼寺を配し、総国分寺である東大寺と総国分尼寺である法華寺が建立され、東大寺の本尊として大仏が造立されました。この大仏の造立に、山口県で産出した銅が使われたのです。また、国家財政を支えた「貨幣」を鋳造する、現在でいう造幣局が山口に置かれています。しかし、大仏の造立がなぜ山口県の銅でなければならなかったのか、また、貨幣の鋳造がなぜ当時の都やその周辺でなく山口県で行われたのか、その理由がわかりません。こうした不思議を解き明かしたいと思ったことがきっかけです。

具体的にどのようなことをするのですか

 平成28年度は、山口市と一緒に、山口市の鋳銭司地区と陶地区を中心に調査する場所の選定や、今後どのように保存、活用していくか等の計画を立て、国に調査を実施するための許可申請をする予定です。
 国の許可が得られれば、来年度以降、学生や地域の人たちの協力のもと、発掘調査を含むさまざまな調査に着手していくことになります。日本初となるような貴重なものが発見されることを期待しています。

最後に一言お願いします。

 高校生までは、唯一確定している答えを、いかに早く正確に導き出すかという練習をしてきたと思いますが、大学は違います。この度のプロジェクトのように、答えが確定していない課題に対して、合理性、妥当性のより高い答えを探し出していくことが求められます。そのためには、良質で豊かな知識、経験等の裏付けが必要になります。大学は、自らが問題をつくりこれに答えを出していく、そうした能力を養う場所だと思っています。
 また、現場での体験や地域の人たちとの交流等、様々な経験は、学生の皆さんの人間的な成長をも培ってくれるでしょう。本プロジェクトのような事業に積極的に関わることによって得た経験や知識は、きっと今後の皆さん自身の財産になると思います。

Copyright © 山口大学総務企画部地域連携課. All Rights Reserved.
TOP