山口県におけるハワイ移民のビッグデータ解析と新規事業の創出
2019年採択プロジェクト紹介(4)
プロジェクト名:山口県におけるハワイ移民のビッグデータ解析と新規事業の創出
研究代表者:杉井 学 准教授(国際総合科学部)
概要を教えてください。 周防大島は、瀬戸内海に浮かぶ現在人口17,000人足らずの小さな島ですが、今も昔も社会を切り開くパイオニアの集まる場所です。近年、第6次産業の開発や若者が起業する島として、地域開発や過疎化対策のモデル事業が多く展開されているのですが、江戸中期以降のまれにみる人口増加や四境戦争(長州征討)、幕末から明治にかけてのハワイ移民など様々な出来事が起こり、非常に興味深い人物を輩出する場所でもあります。 プロジェクトを計画しようと思ったきっかけは何ですか?私は山口大学理学部の出身で、学生時代1年間ほど大島商船高専で非常勤講師として生物の授業を担当していました。ハワイ民のことは当時は知らなかったのですが、年を重ねると歴史に興味をもつようになり、この研究に興味がでてきました。非常に興味深い出身者がいたり、四境戦争があったり、日本一高齢化の進んだ島であったり。また国際総合科学部の4年生の課題解決研究(PBL・周防大島の高齢化、子育て世代の移住・定住がテーマ)でのパートナーが周防大島で、そのプロジェクトの主担当になり、大島をより知るきっかけになりました。つまり、ハワイ移民の歴史を知り、6次産業をはじめとする新しいことに取り組む島として盛り上がっていること、PBL関連でも人との繋がりができたことなどが下地になり、日本ハワイ移民資料館の館長が積極的で、最近ハワイから日本に来る人が増えているということも手伝って、大島を基点にした包括連携や研究ができないかと思ったのがきっかけです。 具体的にどのようなことをするのですか日本ハワイ移民資料館にある移民者情報データベース(明治政府とハワイが取り決めをした渡航記録3万件)は、これまでルーツ探しの情報検索に用いられてきたのですが、本プロジェクトでは、移民者情報データベースにあるそれぞれの移民者の住所地を地理情報システム(GIS:Geographic Information System)にマッピングし、他の情報と重ねて表示することで、視覚的にそれらの関連性を見出す手法をとります。例えば周防大島内でも移民者の出身地がある地域に偏在していたり、人口増加率や所得などの数値、農村部や漁村部、また他の地理的要因に関連したりしているなどが明らかにできれば、従来の学説に新たな知見を加えるができます。また、留学としての渡航も多かったと言われていますので、その辺りも分析していきたいです。日本からハワイへ渡った人々は現地で教科書、コミュニティー紙などを発行し、また海外在住の沖家室出身者の情報も掲載した双方向の雑誌『かむろ』を発行していたのですが、この特徴的な雑誌はこれまで文学表現として、分析されてきていません。そこで、ハワイで使われた教科書や移民による文学作品や雑誌『かむろ』についても分析に加え、伝えたかったこと、その文学表象としての意義等について検証します。また、移民・難民を扱う資料映像を使ったて、人が移動することの意味や発生する課題などの理解を深め、座談会のような意見交換会を開催して、比較文学・文化の視点と談話分析を使って、地域住民が「ハワイ移民」に持つイメージ(出稼ぎに行っていたということもあり、移民ということを隠している人もいた)や暗に今後に期待する事等の表面化しづらい部分の分析を行うことで、島民とハワイに暮らす日系人のニーズに合った交流支援ができるようになると考えています。 最後に一言お願いします。大学にいるので、教育研究分野で大島とハワイとの交流を密にできたらいいと考えています。折りしも、山口大学ではハワイのカウアイコミュニティーカレッジと交換留学を始め、現在の交流学生数は2名なので、交流する人を増やしたいですし、将来的には遠隔講義ができればいいと思っています。新規事業としてはいろいろありますが、大学人としては教育の分野で特に交流を深めていきたいです。 |