SDGsによる山口県内スポーツ観光資源の開発
2019年採択プロジェクト紹介(5)
プロジェクト名:SDGsによる山口県内スポーツ観光資源の開発
研究代表者:西尾 建 准教授(経済学部)
概要を教えてください。本研究プロジェクトは、持続的開発目標(Sustainable Development Goals―SDGs)をベンチマークにして山口県のスポーツ観光資源開発を進めていくことが目的です。海外では、SDGsを観光開発の目標に考えるという研究も少しづつ出てきているのですが日本ではこの分野の研究はほとんどなく私にとってもチャレンジになります。山口大学に来る前は、観光大国ニュージーランドにある大学に勤務していたのですが、山口県も、ニュージーランド同様自然資源が豊富で、秋吉台、青海島、周防大島など自然と組み合わせた活動やマラソン大会などのスポーツ観光資源があります。一方、見るスポーツ、支えるスポーツでもJ2のレノファ山口FCや2019年全国総合優勝を果たしたラグビーセブンスの女子チームである長門ブルーエンジェルズもあります。これらのスポーツ観光資源は地域へのロイヤルティーや経済の活性化につながります。マクロ面では政府の積極的なインバウンド政策などで、国内に外国人観光客が急増しましたが、国内の人気観光地ではオーバーツーリズムになり地域住民との摩擦や環境への影響も出てきて社会問題になっています。さらに政府は、2020年に4000万人、2030年に6000万人というインバウンドの目標を掲げています。持続的なスポーツ観光資源の開発には、従来の経済、観光からだけでなく、環境や食農の面からのアプローチも重要になってきます。地元観光系企業とのネットワークのある朝水宗彦先生、理学分野では、生物生態系の環境評価を専門とする堀学先生を中心にスポーツ観光開発前後の環境評価を、農学分野では、農業経済を専門とする種市豊先生を核に農学分野の研究者との融合を図ってサポートいただき、研究を進めていきます。学外では、スポーツ観光を推進している山口県庁スポーツ文化部とスポーツ観光資源を管轄する市町村の担当者も加わってもらい進めて行きたいと考えています。秋芳洞の世界ジオパークへの登録を目指している美祢市、ラグビーワールドカップのカナダチームの事前キャンプを招致した長門市およびJリーグのレノファ山口FCの担当者でスタートしますが、今後開発していくスポーツ観光資源のある該当市町村の担当者を随時推進体に加わっていただき県内のスポーツ観光のステークホルダーを広げていたいと考えています。 プロジェクトを計画しようと思ったきっかけは何ですか?私が以前住んでいたニュージーランド同様、山口県は素晴らしい自然環境の魅力があり、スポーツ観光のポテンシャルがあるのですが、その魅力が十分に旅行者や来訪者、特に外国人にその魅力が伝わっていないと思い、自分の専門分野のマーケティングの観点から山口県のスポーツ観光資源の魅力を伝えていきたいと考えました。ただし今日本の人気観光地が抱えているオーバーツーリズムの問題も考慮して、将来的にはSDGsの項目をもとに、バランスをとりながらスポーツ観光開発を進めていく必要があると思ったこととがきっかけです。 具体的にどのようなことをするのですか初年度は、山口県内における現在のスポーツ観光資源(参加するスポーツである自然観光源を活用した観光商品やマラソン大会、マリンスポーツなどの大会などと、見る、支えるスポーツであるレノファ山口FCや長門ブルーエンジェルスなどの関連イベントなど)と今山口県にある潜在的スポーツ観光資源のリストアップを行い、自治体へのインタビューおよびSDGsの17の指標の検討を行います。また、観光資源には、観光農園や民泊、山口県の持つ自然環境の融合なども重要となり、観光客は、スポーツ観戦の後、新たな立寄先も求めています。持続的な観光資源を開発するためには、スポーツ・食農・自然の調和が重要であると考えられます。すでに今シーズンJリーグ開幕からレノファ山口FCでアウエイファンの調査を実施しており、この調査結果も活用していきます。2年目ですが、既存のスポーツ観光資源の継続調査に加えて潜在的スポーツ資源の開発と調査をスタートさせ、当プロジェクトをインバウンド(国際観光)の観点からも検討していきます。また秋吉台では、世界ジオパークへの登録もあるためスポーツ観光開発に関する調査を進めていきます。食農の面では、山口型地産地消を目標としている農業法人や食品産業の観光面との融合や農家民泊に関する調査を進めます。また、既存のスポーツ観光資源に関する調査に関するワークショップやシンポジウムを県内で行い、地域コミュニティーと意見交換も行なっていきます。最終年には、スポーツ観光資源の整理分類とSDGsの適用尺度を使って分析を行う予定にしています。本分野は日本での研究が少ないため、海外の事例も参考にしていきます。前職のニュージーランド国立ワイカト大学とは、研究提携協定を結びました。2019年、ワイカト大学から専門家を招致して洞窟観光とスポーツ観光のレガシーに関するセミナーを開催しましたが、参加した県内自治体担当者の方の関心は高かったです。山口学での研究成果は、文理両分野での学会発表などを通じて研究のプレゼンスを高めていきます。2019年7月に経済学部、農学部、理学部合同で山口県内のスポーツ観光資源に関しての学生の第1回の意見交換会を行いました。今後も定期的に学生セッションを企画して学生の意見もプロジェクトに反映させていきたいと考えています。 最後に一言お願いします。山口県は自然資源が豊富なので、スポーツ観光の持続的な成長につなげていくためにはSDGsの活用が重要になってくると考えます。SDGsを使ったスポーツ観光開発は他県ではまだ前例がないので大学としても新たな取り組みとしてのチャレンジになりますし、国際的にも「山口」を発信していくチャンスでもあります。さらにこのプロジェクトに関係して、農学部や理学部と共同(経済学部)でゼミ活動などの学生交流を行うことによって、広い視野を持った人材の育成をしていきたいと考えています。 |