放射線治療の呼吸性移動対策に関する研究

動体追跡放射線治療

当院に導入されている動体追跡放射線治療装置
J Appl Clin Med Phys. 2016 Jul 8;17(4):202-213
動体追跡放射線治療精度検証用ソフトウェア
Phys Med Biol. 2017 Feb 21;62(4):1585-1599
動体追跡放射線治療装置による被ばく線量計算システム
Phys Med Biol. 2018 Mar 21;63(6):065016.

呼吸性移動を伴う肺腫瘍や肝腫瘍は,呼吸で動く腫瘍の範囲を照射範囲に含めることで,治療を行っていましたが,常臓器にも高線量の放射線を照射することになり,副作用が増大する問題が生じていました.この問題を解決するため,当院では動体追跡放射線治療装置を導入して,高精度な放射線治療を実施しています.これらの技術を安全に臨床導入するための手法やソフトウェアの開発を行っています.

腫瘍追跡アルゴリズム

Markerless tumor tracking

Ran et al. ICIARE2021 Best Paper Award
動体追跡装置の透視画像
開発技術が認識した肺腫瘍

現在の呼吸性移動対策の多くが,X線画像を用いて腫瘍の位置を認識し,治療を行っている.X線画像では,腫瘍位置の認識を行うことは難しく,腫瘍近傍に金属のマーカーを留置することで,腫瘍の動きを認識しています.しかし,金属マーカーを体内に留置するのは,患者さんへの負担がかかります.そこで,画像処理を用いて腫瘍を直接認識して治療を行うためのアルゴリズムを開発しております.

Templateless marker tracking (島津製作所共同研究)

腫瘍近傍に留置する金属のマーカーは,様々な形状のものが存在する.肝臓に留置するマーカーは,コイル型をしています.X線透視の方向によって,コイルの形状は変わります.そのため,従来のマーカー追跡の手法は,X線透視の方向毎に,テンプレートを用意しなければならず,治療時間の増大が問題となっていました.テンプレートを使用せずに,コイル型のマーカーを追跡するアルゴリズムを開発しています.

腫瘍位置予測モデル


Phys Med Biol. 2019 Oct 31;64(21):21NT02.

動体追跡治療や動体追尾照射は,腫瘍を認識してから治療を行うため,機械的な遅延が生じます.この遅延は,治療精度に大きな影響を与えます.そこで,この遅延時間を補正するために,腫瘍位置を予測することで,機器の遅延時間を補正するためのアルゴリズムを開発しています.

透視被ばく線量低減

透視方向1

透視方向2

低線量の透視画像
低線量の透視画像から
作成された高線量の透視画像
高線量の透視画像

動体追跡放射線治療は,腫瘍の動き・位置を認識するために,X線透視画像を使用します.治療中のX線透視画像を長時間使用するため,被ばく線量の増加が問題となります.そこで,低線量のX線透視画像から擬似的な高線量のX線透視画像を再構成するアルゴリズムを開発しています.(Shiinoki et al. AAPM 2019)

研究成果

  1. Evaluation of a combined respiratory-gating system comprising the TrueBeam linear accelerator and a new real-time tumor-tracking radiotherapy system: a preliminary study.
    Shiinoki T, Kawamura S, Uehara T, Yuasa Y, Fujimoto K, Koike M, Sera T, Emoto Y, Hanazawa H, Shibuya K.
    J Appl Clin Med Phys. 2016 Jul 8;17(4):202-213. Erratum in: J Appl Clin Med Phys. 2017 Jul;18(4):238.
  2. Verification of respiratory-gated radiotherapy with new real-time tumour-tracking radiotherapy system using cine EPID images and a log file.
    Shiinoki T, Hanazawa H, Yuasa Y, Fujimoto K, Uehara T, Shibuya K.
    Phys Med Biol. 2017 Feb 21;62(4):1585-1599.
  3. Estimation of patient-specific imaging dose for real-time tumour monitoring in lung patients during respiratory-gated radiotherapy.
    Shiinoki T, Onizuka R, Kawahara D, Suzuki T, Yuasa Y, Fujimoto K, Uehara T, Hanazawa H, Shibuya K.
    Phys Med Biol. 2018 Mar 21;63(6):065016.
  4. Evaluation of the effects of motion mitigation strategies on respiration-induced motion in each pancreatic region using cine-magnetic resonance imaging.
    Fujimoto K, Shiinoki T, Yuasa Y, Onizuka R, Yamane M.
    J Appl Clin Med Phys. 2019 Sep;20(9):42-50.
  5. Prediction of lung tumor motion using nonlinear autoregressive model with exogenous input.
    Jiang K, Fujii F, Shiinoki T.
    Phys Med Biol. 2019 Oct 1. doi: 10.1088/1361-6560/ab49ea.
  6. Markerless Lung Tumor Localization from Intraoperative Stereo Color Fluoroscopic Images for Radiotherapy
    Yongxuan Yan, Fumitake Fujii, Takehiro Shiinoki and Shengping Liu
    IEEE Access 2024 March 18. 10.1109/ACCESS.2024.3376744

研究費

  1. 超高線量率四次元動体追跡照射の高精度化に向けた新しい品質管理法の開発
    文部科学省: 科学研究費補助金(若手研究(B))
  2. 四次元動体追跡治療のための新型動体追跡装置による透視被ばく線量計算システムの開発
    がん研究振興財団: がん研究助成(A)
  3. 四次元動体追跡放射線治療のための金属マーカを使用しない非侵襲的肺腫瘍追跡技術の開発
    新日本先進医療研究財団: がん研究助成
  4. 深層学習を用いた肺腫瘍判別によるマーカーレス四次元動体追跡放射線治療の確立
    文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(C))
  5. ビジュアルバイオフィードバックシステムを用いた動体追跡強度変調放射線治療の確立
    文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(C))
  6. バイオメカニクスとロボティクスに基づく肺機能/形態融合の次世代動体追跡放射線治療
    文部科学省: 科学研究費補助金(基盤研究(C))
  7. 膵癌の呼吸性移動特性の定量化のための深層学習を用いた新しい四次元MRI構築法の開発
    文部科学省: 科学研究費補助金(奨励研究)