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ポリエチレン("PEと"表示,レジ袋等に使用)やポリプロピレン("PP"と表示, タッパー、食品包装、自動車のバンパー等に使用)は 代表的な結晶性高分子です。結晶高分子は融点(固体が液体になる、すなわち"融ける"温度)以上では上図左側のように不規則な形態(ランダムコイル)をとります。 融点以下になると、いわゆる"結晶化"を起こします。その際、"長い"という特徴 がもとで、上図右側のように鎖状分子は自身を折り畳みながら、規則正しい配列 を作ります。これが高分子の結晶です。 高分子の結晶化は古くから研究対象として興味を持たれてきましたが、未だにベールに 包まれた部分が多く残されています。
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さて、ここで、少し難しい話をしましょう。
分子の配列は自然に決まるものであり、人間がピンセットで摘みながら自由に配列を
変えるわけにはいきません。
人間が分子を意図的に配列させることができたとしても、それは一時的なものであり
それが自然法則に反するものであればそのうちに崩れることになります。しかしながら、
分子の化学構造を少し変えるなど、ちょっとしたいたずらをすることで自然が決定する配
列を上手に修正して利用することは可能です。
そこで、最も重要となるのは、注目している分子がなぜそのような配列をするかを
根本的に理解することでしょう。そこに必要となるの
が自然の中に潜んでいる法則を理論的・実験的に解き明かすという物理学的手法による
探求です。
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<ちょっと前のトピックス>
1「分子はそれぞれ好き勝手に運動しているんじゃないって?」
「それって本当ですか?」
結晶中の原子・分子は特別な場合を除き、静止しているのではなくさまざまな運動を
しています。では、個々の原子・分子はまったく好き勝手に運動しているのでしょうか?
私たちは、結晶内の隣接する分子同士が互いに影響しあいながら運動していることを、
X線散漫散乱法という特殊な実験方法によって調べました。
鎖状の分子であるn-アルカンには、融点(融ける温度)の直下の温度域に「回転相」
と呼ばれる結晶相が存在します。回転相では、分子運動が盛んになります。特に、
分子軸に沿った並進分子振動や、分子軸を回転軸とした回転運動の2つの特徴的
な分子運動が起こっていると考えられています。
私たちは、それらの分子運動に関して、個々の分子がまったく好き勝手に運動している
のか、いやそうでなく、近隣の分子同士が示し合わせたようにお互いに影響しあって
運動しているのか(空間相関)を調べた結果、後者であることをつきとめました。
n-アルカン結晶回転相における分子の回転運動の空間相関
2「棒状の分子が基板の上に立ったり寝たりするってほんとう?」
事実です!
私たちはn-アルカンという棒状の分子を使って、真空蒸着法という方法で
いろいろな基板の上に膜を作製しました。そして、基板の上で分子がどっちを向いて
並んでいるかをX線回折法で調べました。
その結果、基板上では分子は垂直に立ったり、平行に寝たりすることがわかりました。
一旦寝た分子も、少し温度を上げることによって垂直に立つことも明らかになりました。
3「長さの違う棒状分子が基板の上できれいに積み重なった多層膜ができました。
Q1:どのような方法で作ったの?
A1:真空蒸着法によって炭素数が23のアルカン分子と25のアルカン分子を交互に
Si基板の上に成膜しました。
Q2:なぜ、きれいな多層膜ができたことはわかったのですか?
A2:残念ながらアルカン分子を直接見ることはできません。X線回折法を使って推測し
ました。分子が規則正しくきれいに積み重なっているとして、X線散乱強度を計算
してみると、実際のX線散乱強度と同じになりました。
C23-C25の交互多層蒸着膜
詳しいことが知りたい方は こちらをご覧ください。