- 動物の重要な生体調節メカニズムを、分子、細胞、臓器、個体、そして動物の集団である"群れ"のレベルで解明
- 性成熟、受胎、妊娠、分娩、泌乳、老化といった過程で大きな生理的な変化が起きて、様々な病気やトラブルなどを発症しやすいメスにおける、リスク因子の解明と疾病予防管理技術の開発
- 未利用の生物機能等を用いた新規な動物管理・疾病予防法の開発
- 新発見の受容体に基づく、新薬や新しい動物飼育管理法の開発
人類の先祖がアフリカで誕生し、その住処を世界中に広げる中で、生活を”量”的にも”質”的にも豊かにするために、人類は数種類の科に属する動物を飼育し繁殖させるようになりました。現在では私達の身近な動物となった、イヌやウシなどです。初期の頃は、飢えから逃れるためなどの、原始的で”量”的な要求を満たすためでした。現在では、優秀な動物個体から、高品質な食物や精神的やすらぎ、また盲導犬に代表されるような身障者のための代替機能などを求めるようにもなりました。このことが人間が、なぜ他の種の動物を飼育するかという理由です。
しかし、いつの時代も、人間が必要とするレベルに完全に応えるだけの優秀な動物個体の確保は難しいことです。たとえば一回に分娩する子供の数が少なく、子供が大人になるまでの時間が長い動物では、ストレス等の問題があると、次の子供を産むための妊娠開始を遅らせて、母体は自分が生き残ることを優先します。この結果、分娩から分娩までの間隔(分娩間隔)が延長します。寿命の長さは変わらないのですから(むしろ乳牛では良質な生産物を生産できる寿命は短縮しています)、一生の間に雌動物が生める子供の数は分娩間隔が延長すると減ります。この現象は、特にウシで重要な問題です。
さらに日本の和牛生産の現場では、子牛不足が深刻な状況になり、子牛価格の高騰が生じています。一方で、日本からの和牛肉の輸出量は急激に増えています。Made in Japanの高品質で安心安全な牛肉は海外の消費者からも好評だからです。つまり牛肉の需要は増えているのに、子牛が不足しているのです。
多くの未解明のメカニズムによる難問があります。科学的に答えを発見していくことだけが唯一の道です。動物体内の様々なメカニズムをよく知り、未利用の機能も有効活用し、さらに国内外の様々な資源も有効に利活用することが重要になります。動物の研究では材料と方法を選ぶ際のポリシーが重要です。私達の基本姿勢は、人間の言葉を話せない動物から得られる情報を様々な観点から得て応用する事です。私達は、動物を個体としての観点と、群れとしての観点の両方でとらえます。個体としての観点では、分子、細胞、臓器、そして個体のレベルで考えますが、それぞれの考え方は、相互に補完しあう関係です。一方、群れとしての観点では、個体同士が相互に、良い方向にも悪い方向にも、影響し合うという視点でとらえます。そして個体や群れには、環境ストレスや、飼育者の様々な行為など、個体や群れの周囲に存在する要因が強く影響するという視点でとらえます。
居室:共同獣医学部1階127室
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