研究紹介



機能性電解液(Functional Electrolytes)TMとは

最近のリチウムイオン二次電池(LIB)の用途は、携帯機器だけでなく、パワーツール・電気自動車・定置型などの電源にも拡大しています。LIBの最大の特徴は4Vの高い作動電圧と高いエネルギー密度であり、技術の進展によっては社会生活までも大きく変える可能性があります。

1999年に提唱した“機能性電解液(Functional Electrolytes)TMとは、高純度なベース電解液に機能発現物質(添加剤)を少量添加した電解液のことですが、ベースとなる電解液は環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩を1モル/リットル程度溶解したものです。
まず、ベース電解液は高純度でなければなりません。
この高純度な電解液は長期に渡りフッ化水素酸(HF)の上昇および着色が抑制され、且つ不純物による闇電流が無いので添加剤の作用効果が顕著に発現されるからです。
次に電池は正極・負極・電解液・セパレーターという主な部品で構成されています。
1997年黒鉛負極における「添加剤によるSEI(Solid Electrolyte Interface)制御」によるプロピレンカーボネート(PC)溶媒の分解抑制を目的とした添加剤の発明以降、電解液に機能を持たせる添加剤の研究熱は急激に高まり、負極添加剤のみならず正極添加剤・過充電防止添加剤・腐食防止添加剤・濡れ性改善添加剤・抵抗低減添加剤など、現在では「電解液の研究=添加剤の研究」と言っても過言ではないほど、電解液設計における中核技術として知られるようになりました。 2013年10号の「ぶんせき」にある吉野名誉フェロー( 2019年ノーベル化学賞受賞) の「リチウムイオン電池総論」の一節に、「機能性電解液技術によりリチウムイオン電池の性能は飛躍的に向上した」とあることは喜ばしい限りです。
今後は正極・負極・セパレータの多様化に伴い、電解液への要求も高度化しており、一種類の添加剤で全ての電池性能を満足されることは難しく、複数の添加剤の組み合わせが主流になっていきます。このことからも、電解液の添加剤が各材料の特性を最大限に引き出す「最終すり合わせ」ができる重要な材料であることが分かります。

スマートフォンなどで実績がある電解液が電気自動車用にも使用されるようになった現在、“機能性電解液TMの考え方は、一層、飛躍した進化を遂げるものと信じ、日々研究に取り組んでおります。





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