Training course

各種講習会

3つの講習会とその教材開発について

 山口大学 『化学プロセス強化研究教育推進体』は、以下の3つの講習会を企画・運営しています。

・化学工学基礎講習会(初修者対象)
 化学工学の基礎を学ぶ座学式の講義・演習で、山口地区化学工学懇話会の発足時(平成元年8月)から、毎年開催されてきました。平成17年に「コンビナート製造現場中核人材育成事業」に参画し、(社)山陽技術振興会の委託を受け、山口大学工学部の教員が「化学工学基礎」の教材を開発し、 これをテキストとして平成19年9月から改訂を行いながら現在に至っています。

・現場で知っておきたい化学工学 〔旧名:化学工学入門〕
 化学工学の基礎を学ぶ座学式の講義・演習で、文部科学省の支援事業「地域イノベーション戦略支援プログラム」の中で、産(主に山口県内の化学系の企業)学官のメンバーで人材育成プログラム開発委員を構成し、オペレータ教育の教材についての意見や要望を調査し、 平成27年に教材開発を進めました。同年、講習会の試行の後、文科省事業としては平成29年度まで年2回の講習会を行い、その後は「やまぐち振興財団」のセミナー講習会として2年間実施されました。その後、財団の手を離れ、新型コロナの問題から中断しておりますが、 推進体と山口地区化学工学懇話会の共催として再開する予定で準備をしています。

・化学工学実験講習会
 山口大学工学部で行っている化学工学系の実験をレポート作成も含めて社会人の方に体験していただく主旨で計画しているものです。推進体の設立年度(令和2年)中に開催する予定でしたが、新型コロナの問題で実施を見送っています。

いずれも、山口地区化学工学懇話会との共催行事と令和3年から行っております。

化学工学基礎講習会(初修者対象)

 本講習会では、大学・高専・高校などで化学工学を専攻しておらず,実務において化学工学の知識を必要としている方を対象とします。 化学工学の基礎として6つの項目を分かりやすく講義し,さらに演習問題を解くことによって化学工学の基礎知識を習得することを目的とします。 スタッフ社員の導入教育として、特に大学・高専・高校などで化学工学を専攻しておらず、実務において化学工学の知識を必要としている方を対象とします。3日間の座学を行うもので、講義内容は6テーマ(各3時間、一日に2テーマ)で構成されており、講義と演習を行います。6テーマの概要は以下の通りです。

1.化学工学基礎の基礎
 化学工学の基礎の基礎である物質収支と熱収支の考え方と計算方法を解説します。練習問題を通して理解を深めます。

2.流動・流体操作
 「流れ」という現象について、液体や気体(流体)の輸送に重要な物性と力について説明し、基本的な式について解説します。次に、実際の配管設計の指針を説明し、演習問題を通して理解を深めます。さらに流体が固体粒子を含んでいる場合(スラリー)の流れについて、基本的な考え方を解説します。

3.伝熱
 加熱・冷却・保温など化学プロセスにおいて熱の移動は重要かつ基本的な操作です。熱移動の原理を学び、熱交換器を実例として、その応用を講義と演習により理解します。

4.蒸留
 コンビナートで活用されている平衡分離操作のひとつである蒸留について、気液平衡関係、蒸留の原理、物質収支と操作線、連続蒸留における設計法などを解説します。理想化した問題を活用して、蒸留の理解を深めます。

5.反応速度・反応操作
 工業的反応器を設計・操作するために必要な反応速度の扱い、反応器の種類および反応器内流動状態と反応成績の関係の基礎について説明します。基礎的な演習問題を活用して理解を深めます。

6.粉体工学
 化学工学で考察する粉粒体の意味と特徴及びコンビナートで活用されている粉粒体操作の基礎を修得します。粉体工学の問題を理解することで、粉体工学の化学工学的な考え方を身につけます。


 開催は年2回で、おおむね3月の第2週の3日間、および8月の第4週目の3日間に行っています。3月は山口県周南市、8月は山口県宇部市の会場を使用しています。

現場で知っておきたい化学工学

 初任オペレーターの方、及び初めて化学工学を学ばれる方を対象とし、1日半の座学を行うものです。講義内容は5テーマで構成されており、講義と演習を行います。5テーマの概要は以下の通りです。

1.温度計から始める伝熱の基礎
 温度の1度はどうやって決められたのか、温度計の種類、熱の伝わり方には3通りある、という超基礎的な内容から、熱交換器のトラブルの原因追及まで、伝熱に関する話題を広く講義します。

2.'燃焼'の理解から学ぶ反応とモル
 水素は燃えて水になる、メタンは燃えて、水と二酸化炭素になる、という現象を反応式で書くことからはじめ、「モル」に対する理解を深めます。

3.単位からはじめる流動の基礎
 基礎単位(m、kg、s、℃)と、これを使って作ることができる組立単位について、基礎から学びます。この中で、特に圧力と流量の単位について取り上げ、その積がポンプの動力になること、実際のポンプに取り付けられた銘板の解説、ポンプ動力の求め方(ベルヌーイの式)、流れの状態について(レイノルズ数)学びます。

4.物質の出入りを把握する物質収支
 濃度の異なる食塩水の混合の問題からはじめ、蒸留、溶液の希釈、材料の乾燥、ガス分離、蒸留塔による液の分離、晶析などの問題を「マテバラ表」というテクニックで解いていく演習を行います。さらに、2で学んだ内容の応用として、可燃ガスの燃焼についての物質収支を理解します。最後に、溶液の濃度が時間的に変化する非定常問題を解説します。

5.現象の本質を捉えるデータ処理
 データ処理において、安易に平均をとる危険性からはじめ、データの傾向をつかむために、ばらつきの可視化とばらつきの中心の求め方を学びます。演習を行いながら、データのばらつきを表現する方法を解説し、その原因について考えられることを受講者にお話しいただきます。さらに時系列データの扱いとして、移動平均を学び、相関係数の落としついても紹介します。


 開催は年1回の予定です。これとは別に、出前講義形式でもご要望があれば検討します。

化学工学実験講習会

 上記の「化学工学基礎講習会(初修者対応)」の実験版という位置づけで検討中です。1日半程度の内容で、簡単な座学の後、実際に実験を行い、得られたデータをもとにレポートを作成していただきます。講義内容は以下の5テーマで検討中です。
1.円管内流動  流体を配管で輸送する系に対し、流量と直管部における圧力差の関係を測定し、レイノルズ数、平均流速、管壁の摩擦などを求めることによって、流動の基本的な概念を理解するとともに、無次元数の取り扱いについての理解を深めます。

2.限外ろ過
 タンパク質溶液のクロスフローろ過を行い、透過溶質濃度と透過流速を測定します。溶質が膜面に堆積するゲル層モデルに基づいて総括物質移動係数と膜面濃度を求めます。膜ろ過における溶質の移動過程について理解を深めます。

3.単蒸留
 揮発性混合物を加熱することで濃縮・分離する単蒸留実験を行い、仕込み液、留出液、缶残液の質量および濃度を測定し、物質収支をとることを通して蒸留における基礎的な概念について理解を深めます。

4.沈降法による粒度分布測定
 粉体を水に均一に分散させた後に静置し、ある深さ位置におけるこの分散液の比重を任意の静置時間で測定します。有効深さと比重、静置時間の関係から、粉体の粒度分布曲線を作成します。流体中における重力沈降の概念を理解し、微小な粉体に広く適用されるストークス径を用いた粒度分布測定法の理解を深めることを目的とします。

5.触媒膜による溶存有機物分解
 水に溶解した有機物の酸化分解実験を行います。有機物の経時的な濃度変化を速度式で記述します。操作条件と反応速度定数の関係を実体験し、理解を深めます。



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