土壌中には様々な物質が存在しています。その中でも土壌有機物(腐植)は土壌の植物生産能力や環境調節能力に深く関与するため、その挙動や機能解明は農業や環境保全の観点から極めて重要な課題です。
本研究室では,様々な物質が存在してかかわり合い混沌とした土壌の中におけるルールを見いだし食糧生産や環境保全に貢献可能な情報の取得をめざして,土壌有機物と微生物や植物との相互作用に関する研究を行っています。
腐植物質とは,生物遺体や代謝産物などが土壌中で分解・重合して生成された暗色無定形の難分解性,多分散性を示す高分子有機物質の混合物です。
この物質は土壌有機物の主要成分であり、右図のように様々な機能を持っています。しかし,腐植物質の構造や機能性などについての詳細はまだまだ明確にはなっておりません。また土壌中のみならず水圏や堆積物など様々な環境中にも存在していていることから,農学のみならず環境科学や地球科学など多くの分野で研究対象となっています。
腐植物質は陸域生態系における最大の炭素貯蔵庫です。従って,腐植物質の生成や分解過程は炭素循環や地球温暖化と密接に関わっています。ところが,腐植物質の分解過程については未だ不明な点が多く,メカニズムなども解明されていません。そこで,当研究室では微生物による腐植物質の生分解研究を行い,炭素循環の詳細な理解や温暖化軽減対策などに貢献できる情報の取得をめざします。
テーマの一例)
腐植物質は様々な環境化学物質と相互作用し,その挙動や毒性に影響を及ぼすことが知られています。しかし,環境化学物質の生物毒性発現に及ぼす腐植物質の影響の詳細は明らかにされていません。そこで,当研究室では環境化学物質として多環式芳香族炭化水素(PAH)を対象として研究を行い、環境中でのこれらの物質による毒性の挙動解明や腐植物質を考慮した新たなリスク評価へつながる情報の取得をめざします。
テーマの一例)
腐植物質はそれ自身の作用や養分吸収促進により植物の生育を促進することが報告されています。また,さまざまな元素と結合することから植物生育に障害を及ぼす物質の吸収を妨げ,結果的に植物生育を補助するとも考えられています。しかし,これらのメカニズムや作用発現性についての詳細は明らかにされていません。そこで,当研究室では腐植物質の多様性に着目して研究を行い,腐植物質の農業利用に新たに貢献できる情報の取得をめざします。
テーマの一例)
植物体や有機質資材由来の有機物には,植物に対して生理活性作用(生育促進や阻害)を有するものも少なくありません。これまでに多くの植物などからこのような生理活性物質が発見されていますが,環境中ではこれらの物質と植物との間に土壌が介在することがほとんどですが,その影響は明らかになっておりません。生理活性物質の作用発現に土壌がどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることは、環境貢献型農業の実践や自然生態系の理解にとって重要な課題です。
そこで、当研究室では生理活性物質の作用発現に及ぼす土壌特性の影響についても研究を行っています。
その他にも,土壌有機物と微生物や植物と関係した研究を行っていきたいと考えています。