世界には様々な土壌が存在し,その中に含まれる土壌構成成分の質や量は一つとして同じところはありません。そのような,土壌において食料生産や環境保全(維持)に関わるルールやシステムを見いだすことは非常に重要な課題です。本研究室では,土壌構成成分の中でも特に土壌有機物(腐植)に着目して、その挙動や機能解明をめざして研究を行っています。また,土壌自体の性質を理解することは土壌利用や保全の観点から必須であり,山口県内土壌の特性についても研究を行っています。
腐植物質とは,生物遺体や代謝産物などが土壌中で分解・重合して生成された暗色無定形の難分解性,多分散性を示す高分子有機物質の混合物です。
この物質は土壌有機物の主要成分であり、右図のように様々な機能を持っています。しかし,腐植物質の構造や機能性などについての詳細はまだまだ明確にはなっておりません。また土壌中のみならず水圏や堆積物など様々な環境中にも存在していていることから,農学のみならず環境科学や地球科学など多くの分野で研究対象となっています。
腐植物質は陸域生態系における最大の炭素貯蔵庫です。従って,腐植物質の生成や分解過程は炭素循環や地球温暖化と密接に関わっています。ところが,腐植物質の分解過程については未だ不明な点が多く,メカニズムなども解明されていません。そこで,当研究室では微生物による腐植物質の生分解研究を行い,炭素循環の詳細な理解や温暖化軽減対策などに貢献できる情報の取得をめざします。
テーマの一例)
腐植物質は様々な環境化学物質と相互作用し,その挙動や毒性に影響を及ぼすことが知られています。しかし,環境化学物質の生物毒性発現に及ぼす腐植物質の影響の詳細は明らかにされていません。そこで,当研究室では環境化学物質として多環式芳香族炭化水素(PAH)を対象として研究を行い、環境中でのこれらの物質による毒性の挙動解明や腐植物質を考慮した新たなリスク評価へつながる情報の取得をめざします。
テーマの一例)
山口県には褐色森林土が広く分布しておりますが,それ以外にも多くの種類の土壌が分布しております。特に,県中央部には日本最大のカルスト台地である秋吉台が位置し,県北部には50余りの火山からなる阿武火山群が位置しており,その地域の土壌も独特な特徴を示します。そこで,当研究室ではこれらの土壌の特性や生成過程についての研究を行っています。
テーマの一例)
秋吉台の土壌断面ならびに秋吉台の風景
その他にも,土壌,土壌有機物と微生物などに関わる面白い研究を行っていきたいと考えています。