山口大学医学部 大学院医学系研究科・医学部

Vol.2「PRIME CAR-T細胞」について

山大研究Q&A Vol.2「PRIME CAR-T細胞」について

 がんの治療は、「外科療法」「化学療法」「放射線療法」が三大標準療法として知られています。一方で、日本人の死因の第一位が「がん」であることは現在も変わらず、厚生労働省の統計によると、2023年度は日本国内の全死亡者の4人に1人ががんで亡くなっています。
 従来の三大標準療法の適応が困難ながんに対する治療法として、現在注目を集めているのが「CAR-T細胞療法」です。このCAR-T細胞について、長く研究を続ける大学院医学系研究科免疫学講座の玉田耕治教授に聞きました。

Q.「CAR-T細胞療法」について教えてください。

CAR-T細胞療法は、患者さんの血液から採取した免疫細胞(T細胞)に、がん細胞を攻撃する人工タンパク質(CAR)を組み込んで産生、培養した「CAR-T細胞」を患者さんに投与する治療法です。これにより、CAR-T細胞が、がん細胞の目印(標的分子)を見つけて攻撃し、がんを殺傷します。

 CAR-T細胞はがん細胞に対して殺傷能力が高く、がん治療で期待されている免疫細胞療法ですが、現在のところ、有効性があるのは血液がんのみとされています。これは、血液がん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)のもととなるものが全て血液の細胞であり、血液が流れるところにがんができることが関係しています。

Q.どのような関係があるのでしょうか。

CAR-T細胞療法では、CAR-T細胞を点滴で投与するため、血管内に直接CAR-T細胞が入っていきます。血液がんの場合、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など病気の種類が異なっても、CAR-T細胞のターゲットとなる標的分子が比較的均一に血液内に発現しています。点滴によってCAR-T細胞が直接血管内に入っていくことでターゲットであるがん細胞を認識しやすく、攻撃しやすいのです。

 一方、胃がんや肺がん、大腸がんなどの固形がんは、血管の外にある臓器に塊でできます。点滴によって血管内にCAR-T細胞が投与されても、血管の外にできた固形がんのところまで、攻撃に値する十分な量のCAR-T細胞が到達することは難しいです。

また、CAR-T細胞が認識できるターゲットを、一部の固形がんの細胞が持っていないケースもあります。そういったことから、固形がんではCAR-T細胞ががん細胞を認識しづらく、攻撃するのが難しいのです。

Q.玉田教授が開発した「PRIME CAR-T細胞」は、従来のCAR-T細胞とどう違うのでしょうか。

 次世代CAR-T細胞として開発した「PRIME CAR-T細胞」は、遺伝子組み換えによって、T細胞にCARを組み込む際に、インターロイキン-7(IL-7)とCCL19というタンパク質も一緒に組み込みます。これによって、CARだけでなくIL-7やCCL19も同時に産生するようになります。

IL-7とCCL19にはそれぞれ働きがあり、CCL19は体内の免疫細胞の動きを調整し、集めてくるナビゲーションシステムのような働きがあります。これをCAR-T細胞が作ると、体中の免疫細胞をがんのところに集めてきます。一方、IL-7は免疫細胞を増やす増殖因子ですから、集まってきた免疫細胞に栄養を与えてどんどん増やします。

こうした働きにより、PRIME CAR-T細胞なら、固形がんに到達した一部のCAR-T細胞が自ら増殖、さらに他の免疫細胞も集めて増殖させ、がん細胞に対して総攻撃することができます。これが、PRIME CAR-T細胞の大きな特長です。

Q.PRIME CAR-T細胞の研究は、現在どこまで進んでいますか。

 PRIME CAR-T細胞を用いた創薬研究が進んでおり、現在は第一相臨床試験を行っているところです。一般的に、第一相臨床試験の期間は約2年、第二相臨床試験は約3年、第三相臨床試験も約3年かかると言われています。ですから、一般的な薬の開発期間としては8年から長くて10年といったところでしょう。

 ただし、CAR-T細胞療法は再生医療等製品になります。この場合、条件及び期限付き承認制度というものがあり、第二相臨床試験の段階で安全性が確認でき、有効性が推測できれば国が製造販売を承認する可能性もあります。

※図解は全て玉田教授が代表を務めるノイルイミューン・バイオテック株式会社のホームページより抜粋


研究者情報

大学院医学系研究科 免疫学講座

教授 玉田 耕治

研究活動Q&A一覧ページへ戻る
Copyright © 山口大学医学部. All Rights Reserved.
TOP