第44回 やまぐち眼科フォーラム
- 日時
- 2026年01月24日(土)17:00~19:00
- 場所
- 湯田温泉ユウベルホテル松政
- 詳細
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- 特別講演1
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座長:山口県眼科医会 会長 / 大西眼科 院長 大西 徹 先生
「緑内障難症例とその対策:よりよい視機能維持のために」
金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学 教授 東出 朋巳 先生 - 特別講演2
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座長:山口大学大学院医学系研究科眼科学 教授 木村 和博 先生
「眼科ウイルス感染症の最前線:診断と治療の最新エビデンス」
鳥取大学医学部視覚病態学 教授 宮﨑 大 先生
W先生
令和8年1月24日に湯田温泉ユウベルホテル松政で第44回やまぐち眼科フォーラムが開催されました。特別講演1では金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学教授 東出朋巳先生より、「緑内障難症例とその対策:よりよい視機能維持のために」と題してご講演いただきました。
緑内障はほとんどが自覚症状のないまま進行するため、早期発見が必要であり、そのためには検査の機会を増やすことが大切です。その緑内障の中でも、病気が進行している方、眼圧が高い方、ご高齢の方といった項目に当てはまる、リスクの高い緑内障に対して視機能維持のためにどのような対策をされているかをご教示いただきました。また、進行した緑内障に対しては手術による治療を行いますが、手術後に感染や角膜へのダメージといった合併症が起きる場合があります。それらの合併症をどのように防ぐのかについてもお話いただきました。
○手術後の感染について
一部の緑内障手術では房水を眼外の濾過胞に流しますが、濾過胞に血管がないと感染のリスクとなるため、丈夫な濾過胞を作ることが大切です。本講演ではテノン嚢前転法が、血管のない濾過胞になるのを防ぐために有用であるとのことで、特に治療が難しいケースであるご高齢の方で目の組織が薄い方には、薬液を注入してテノン嚢と強膜の境界を作り、内直筋の上縁付近でテノン嚢を把持することで、結膜の損傷を予防しつつ容易かつ確実にテノン嚢を前転できるということを、実際の手術映像など提示いただきながらお話いただきました。
○角膜内皮細胞へのダメージについて
近年行われているプリザーフロ®マイクロシャントでの手術後の合併症として、角膜内皮障害の報告があります。落屑緑内障は特に角膜の細胞が減少しやすいため注意が必要です。前眼部OCTで、挿入した管の位置と角膜の内側の細胞までの距離が近いと、細胞へのダメージが起こりやすいため、なるべく角膜側でない深い位置に挿入することを心がけ、挿入後に隅角鏡で確認し、距離が近ければ挿入しなおすことで、角膜の細胞へのダメージのリスクを減らすことができる可能性があるというお話でした。
また、緑内障には他の目の病気と併存している場合や、緑内障によって他の病気や症状が発生する場合、他の病気から緑内障が発症する場合があるとのお話がありました。その中で、黄斑上膜が併存している緑内障の患者さんに対して硝子体手術を行う場合は、内境界膜剥離を小範囲に抑えることで視野に与える影響が少なくなる可能性があることを、実際の研究結果などを交えてお話いただきました。
さらに、前房が浅く緑内障発作と考えられたものの、実際にはVogt-小柳-原田病であったという症例や、緑内障で飛蚊症を訴える患者さんが実は悪性リンパ腫であったという症例をご経験されたとのことで、眼底検査やOCT撮像の大切さについて改めてお話いただきました。また、緑内障で鼻涙管閉塞もある方は、慢性涙嚢炎の合併が多いため、通水検査も重要であるとご教示いただきました。
本講演では実際に先生がご経験された患者さんの事例に基づき、手術映像なども交えながら、非常にわかりやすく緑内障治療における対策をお話いただきました。今後はご教示いただいたポイントを意識しながら日々の緑内障診療に携わっていこうと思います。この度はご講演いただき誠にありがとうございました。
F先生
令和8年1月24日に湯田温泉ユウベルホテル松政で第44回やまぐち眼科フォーラムが開催されました。特別講演2では鳥取大学医学部視覚病態学教授 宮崎大先生より、「眼科ウイルス感染症の最前線:診断と治療の最新エビデンス」についてご講演いただきました。目に感染するウイルスの種類ごとに、診断のポイントや最新の治療についてご紹介いただきました。
目に感染するウイルスとして、口唇ヘルペスなどの原因であるヘルペスウイルス、帯状疱疹の原因ウイルス、サイトメガロウイルスなどが挙げられます。ヘルペスウイルスによる角膜炎(ヘルペス性角膜炎)は年間10万人に約20人が発症し、そのうち40%の方が生涯に再発を経験します。過労、夏の高温や冬の低温、免疫力の低下などが再発の引き金となることがあり、再発を繰り返すことで視力低下のリスクが高まります。抗ウイルス薬の長期内服が再発予防に有用とされていますが、ウイルスの種類によって有効な治療薬が異なるため、正確な診断が大切です。
帯状疱疹ウイルスによる角膜炎の診断では、目の見た目の所見だけでなく病歴が非常に重要です。過去半年から1年以内に「ゾワゾワした感覚」や皮膚・頭髪の異常がなかったかを確認することが診断の鍵となります。また、ヘルペス性前部ぶどう膜炎には、抗ウイルス薬とステロイド点眼を組み合わせた治療が行われますが、ウイルスの種類によって効果の出やすさが異なることが研究により示されています。
サイトメガロウイルスは、免疫が低下した患者さんで特に問題となるウイルスで、角膜の内側の細胞(角膜内皮細胞)に感染し、著しい眼圧上昇を引き起こすことがあります。診断には眼内液を用いたウイルスの遺伝子検査(PCR検査)が有用ですが、ウイルスが潜伏している状態では一度の検査では検出できないこともあり、繰り返し検査が必要になる場合があります。治療には抗ウイルス薬の内服薬と点眼薬がありますが、再発予防の面では内服薬の方が優れているという研究結果が示されました(注:いずれも日本では適応外・未承認)。また、細胞傷害性Tリンパ球の活性が病気の経過に大きく影響することも紹介されました。
本講演では、眼科ウイルス感染症の診断と治療に関する最新の知見を、豊富な症例を交えてわかりやすくご解説いただきました。ウイルスによる目の病気は早期診断と適切な治療が視力を守るうえで非常に重要であることを改めて認識いたしました。この度はご講演いただきまして誠にありがとうございました。

