第77回山口眼科手術懇話会プログラム
- 日時
- 2024年11月09日(土)17:00~20:00
- 場所
- 山口大学医学部 霜仁会館3階
- 一般口演
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17:00~18:30
座長:布 佳久(下関医療センター)
- 「原因不明の硝子体混濁の2症例」
舩津 法彦、青木 連、東島 史明、太田 真実、山本 和隆、平野 晋司、木村 和博(山口大学) - 「プリザーフロマイクロシャントの使用経験」
寺西 慎一郎、吉本 拓矢、砂田 潤希、内 翔平、木村 和博(山口大学)
座長:内 翔平(山口大学)
- 「山口大学における保存角膜を用いた角膜移植の治療経験」
岩本 菜奈子1、三國 雅倫1、佐久間 彩乃1、中村 陸2、濱田 和花1、山田 直之1、木村 和博1(1.山口大学 2.九州大学) - 「超高齢者に対する白内障手術について」
近藤 由樹子、徳田 あゆみ(宇部中央病院) - 「レンティスコンフォート®トーリックの術後回旋に対するCTRの効果」
宮城 秀考、石田 康仁、廣田 篤(広田眼科)
- 「原因不明の硝子体混濁の2症例」
- 特別講演
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18:30~20:00
座長:木村 和博(山口大学)
『映像で綴る難症例硝子体手術~最近の東北大学での研究内容を含む~』
國方 彦志 先生 東北大学病院 特命教授
三國雅倫(山口大学)
第77回山口眼科手術懇話会の特別講演では、東北大学病院特命教授の國方彦志先生より「映像で綴る難症例硝子体手術~最近の東北大学での研究内容を含む~」と題してご講演いただきました。
初めに先天網膜分離症に網膜剥離、増殖硝子体網膜症(proliferative vitreoretinopathy:PVR)を併発した症例についてご提示頂きました。術中OCTを活用することで見た目からは判断のつきにくい網膜分離と網膜剥離を区別することができ、retinectomyを行う範囲を適切に決定できるなどのメリットを実際の手術映像とともにご教示いただきました。advanced stageのPVRでは積極的に輪状締結術を併用することが重要であることもお示し頂きました。重度のアトピー性皮膚炎患者のPVR手術で、パーフルオロカーボンで網膜が進展しない場合にも、網膜前の増殖膜、網膜下の増殖膜を丁寧に根気強く処理していくことで網膜が進展し網膜復位が得られた症例をご提示いただきました。advanced stageであるほど、増殖膜の処理には辛抱強さと諦めない姿勢が必要であると改めて感じました。
強度近視眼の5-15%に生じる事がわかっている脈絡膜内洞様構造(intrachoroidal cavitation:ICC)ですが、黄斑上膜の手術時に内境界膜を翻転してsinkholeを閉鎖したところ、驚くべきことにICCが消失したという1例をお示しいただきました。このことからsinkholeが形成されることで、ICCが生じることが推察されるとのことでした。ICCが消失した後に視野障害の悪化が見られることがあり、注意が必要とのことでした。
増殖性糖尿病網膜症(proliferative diabetic retinopathy : PDR)による牽引性網膜剥離の症例についてもご提示いただきました。27Gシステムを用いた経結膜小切開硝子体手術は正確な増殖膜の処理に向いており、結膜も温存できるためPDRの初回硝子体手術には最適であるとのことでした。術中に網膜裂孔を作らずに増殖膜を処理することで、排液操作を行わなくても良好な転帰をたどった症例をご提示いただきました。眼球を圧迫し最周辺部まで裂孔がないことを確認することが絶対条件ではありますが、術直後には多量のsubretinal fluidが残存していても、1年半程度の経過観察で網膜下液が完全に消失し、良好な視力を維持できた症例は印象的でした。
最近の東北大学での研究内容について多数ご提示いただきました。PDR症例では爪の毛細血管の狭小化が見られることや、全身の抗酸化力が病的近視における脈絡膜新生血管のある症例では有意に低くなっており、抗酸化力が低い方は6ヶ月間の抗VEGF薬注射の回数も有意に多かったことや、網膜内境界膜剥離がもたらす網膜への影響を同一眼の上下のセクターで比較した結果、網膜内境界膜剥離によって網膜感度の低下を認めた事などご紹介いただきました。
また、現在治療法が確立していない疾患に対する新たな治療の可能性についてもご教示いただきました。網膜中心動脈閉塞症に対してカルパイン阻害剤の内服を4週間継続することで、閉塞後1ヶ月以内に約80%で起こる再開通による再灌流障害(網膜神経節細胞死)を抑制し、視機能回復や維持が期待できるという革新的な内容や、網膜色素上皮裂孔を生じた症例にiPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を網膜下投与することで視力改善を狙う治験についてもお示しいただき、大変興味深く拝聴致しました。
特別講演を通して、難症例に対する硝子体手術や最先端の研究成果にふれることができ、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。この度は貴重なご講演を賜りまして誠にありがとうございました。