「美術教育」とは不思議な言葉です。「美術の教育 Education for art 」という意味にも、あるいは「美術による教育/美術を通した教育 Education through art」という意味にもとらえられます。
　前者は文字どおり絵画、デザイン、彫刻、工芸、美術史などの専門的な知識や技能を習得することをさし、芸術家やデザイナーなどの専門家を養成する意味合いも持ち得ます。美術の専門性を学び、初等・中等教育の教科教育において教師として次世代へ伝達していくことも含みます。
　また後者はハーバート・リードなどが言う、美術がすべての精神的な活動を産み育てる豊饒な人間活動であるという考え方でもあり、美術が人間活動の様々な局面における汎用性を持つという考え方に至ります。美術教育の意味を教育機関内だけでなく地域社会にも目を向けた場合、展覧会、美術館、アートセンター、ギャラリーなどの社会教育の一環としての教育活動などが挙げられます。また従来の学校などの教育機関ではない組織からの美術教育、たとえば美術館やアートセンターの教育普及やNPOや個人の芸術家からの美術教育もあります。このように「美術教育」という概念は広く受け手によって様々なレベルで解釈され得る言葉であり、多くの意味を含んでいます。
　山口大学教育学部教科教育コース「美術教育選修」では上記の美術教育の意味における教科教育、つまり初等教育における図画工作や中等教育における美術に強い教員を養成する課程です。同時に先ほどの「美術教育」における広い意味合いを理解できるよう、専門的な知識や技能及び広い見聞や知識、体験を習得して卒業できるように意図されたカリキュラムを有する選修となっています。

　美術教育選修は絵画、彫刻、デザイン、工芸、美術理論及び美術史、美術教育及びそれらを包括する学習を通して「美」を誕生させる瞬間に立ち会うことの喜びを知り、実際に造形的（あるいは概念的）作品を創造する体験と理論を日々深めています。学部での学びに加えて小中学校での教育実習を通して、それらを学校教育の中で指導することができる教員を育成しています。
　本選修のスタッフは上記の6分野を専門とする専任教員4名と非常勤講師によって構成されており、これらの分野を広く、深くカバーするため、カリキュラム上には多くの講義と実技・演習があり、４年間でじっくり学ぶことができます。
　３年次後期には卒業研究として上記６分野から主専攻と副専攻として２つの分野を選択し、卒業制作あるいは卒業論文を山口県立美術館で発表します。（ただし年度によっては山口市民会館などの他の施設で発表しています）平面と立体、実技と理論などの２分野を選択することにより、領域横断的な作品が多く生み出される傾向も本選修の特徴です。卒業制作展は２月に行われており、例年多くの来館者があり、様々な反響をいただいております。
　美術教育選修は小学校の教員免許と中学校·高等学校の美術の免許を取得するコースです。小·中·高全ての免許を取得することもできます。これら以外に幼稚園や特別支援、中学校の他の教科の免許を取る学生もたくさんいます。現状の小中連携や小中一貫教育に対応し、さらに将来の社会システムや教育環境の変化を見越して様々な免許を取得できることも特徴の一つです。このように本選修では制作や理論的な学習及び教育実習など、密度の高い教育と研究体制が整備されておりますので、自発的に学ぶ姿勢があれば、さらに創造的な学生生活が送れるものと自負しております。
 

　美術教育教室関連

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