メッセージ

 私たちの研究室のページをご覧くださり、ありがとうございます。

 私たちが在籍する生理学第一講座は、1944年に開講され、斎藤幸一郎教授、井上章教授、丹生治夫教授、長琢朗教授、小林誠教授らが生理学の研究・教育の伝統を築いてこられました。2021年9月1日、新型コロナウイルスの第5波の真っ只中に、広島大学原爆放射線医科学研究所より宮本達雄が第6代教授として着任し、新たな分子細胞生理学講座がスタートしました。「ゲノムを読み、編集する」時代の医学・生物学の研究・教育をラボメンバーと力を合わせて推進していきたいと思います。

 私たちの研究室の目標は、「細胞が周囲の環境に合わせて、心地よく生きる」仕組みを理解することです。私たちの研究室では、細胞が外界を察知するために、進化の過程で開発した「一次繊毛」という細胞装置に着目して、目標に向かって研究を進めています。一次繊毛は、約1〜5マイクロ・メートル(1ミリメートルの1/1000)くらいの細胞表面に発達する小さな装置で、さまざまなチャネルや受容体が集積しています。繊毛が異常になった場合、慢性腎不全、失明、がん、肥満など実に多様な病態を引き起こします。繊毛を知ることは、生理学を理解することに留まらず、将来的には、疾患発症メカニズムの理解や克服につながります。

 私たちの研究室は、様々なバックグラウンドをもつ研究者(もちろん、学生さんも含まれます)が集い、サイエンスを楽しむ「場」であり続けたいと強く思っています。サイエンスは、人生と同じで、仮説どおり(思いどおり)に進むわけではありません。しかし、ネガティブ・データ(失敗)を落ち着いて分析し、新たな実験計画をたて熱意を持って実行する姿勢、他者のサイエンスから学ぶ姿勢があれば、サイエンスは“苦しい”ものではなく、実に、“楽しい”ものです。「知の創造」が本当の意味での“楽しい”活動であるためにも、ラボメンバーが安心して「失敗できる」研究室を運営していきたいと思います。

 AI、DX、ゲノム編集、クライオEM・・・と、イノベーションの波の間隔が短く、ライフサイエンスの最先端は追いかけるだけでも大変ですが、私たちは、本質的な「問い」に正攻法で「答え」を出すことを大切にして、サイエンスを楽しんでいきたいと考えています。今後とも、私たち、分子細胞生理学講座に対するご指導、ご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

山口大学大学院 医学系研究科 分子細胞生理学講座
教授 宮本 達雄