寄附者のご紹介

山口大学基金にご支援いただき、心より感謝申し上げます。ご寄附いただきました皆様への感謝の意を込め、ここにご紹介いたします。

寄附者のインタビュー

「意外と身近?七村さんの素顔」
「Let’s Challenge!~七村さんから学ぶ生きる力~」

七村奨学金

「意外と身近?七村さんの素顔」
「Let’s Challenge!~七村さんから学ぶ生きる力~」

なぜ七村奨学金を創ろうと思ったのか

給付型奨学金制度を始めた理由として、七村さんは自身の学生時代を振り返ります。4人兄弟、女手一つで育ててもらい、お世辞にも豊かとは言えなかった当時。大学資金も生活資金も自身で稼ぐしかなく、経済学部があって学費が安い山口大学を選びました。山口大学は国立大学で学費が私学に比べ安く、加えて奨学金制度があったからです。この制度に助けられた七村さんは、自身と同じような境遇にある学生の力になりたいという思いから、七村奨学金を創設しました。元々、山口大学への寄付を考えていた七村さんでしたが、山口大学創基200周年記念事業募金において、もっと学生のために活用してもらいたいと考えた末、奨学金支援という形を選んだそうです。

七村奨学生に期待すること

私の予想とは裏腹に、七村さんは七村奨学金を受けた学生から感謝されることを期待してはいませんでした。彼が望むことは、七村奨学生が、将来この制度を引き継いでくれること。七村奨学生の中から、1人でもいいから、20年、30年後に給付型奨学金制度のことを想い、このシステムを継いでくれる人が出てきほしい、七村さんはそう語ります。

寄付は偽善と思っていた30代

今では寄付により多くの学生を手助けする七村さんですが、30代から40代くらいまでは、寄付は偽善だと思っていたそうです。加えて特段子供が好きというわけではなかった彼は、七村奨学金創設者である今とは真逆の価値観を持っていました。
転機はカンボジアに訪れたことでした。現地で見た子供たちの目を輝かせている姿、生きることに一生懸命な姿に感銘を受けたそうです。この子たちの力になりたい、この子たちに喜んでもらえるのなら寄付したい。素直にそう感じた七村さんは、やがてカンボジアに小学校を設立します。そこから、寄付は、自分のためでもあるのだと考えるようになったそうです。

七村さんが設立した” 株式会社セプテーニ・ホールディングス”の
社是「ひねらんかい」に込めた想い

会社設立にあたり、「上場すること」、「同族経営にしないこと」、そして「社是を作ること」を考えていた七村さん。サントリーの『やってみなはれ』や堀場製作所の『おもしろおかしく』、ホンダの『やらまいか』などに感化され、関西弁・平仮名・短いという特徴を持った覚えやすい社是を作りたいと考えていたそうです。
いざ起業してみると、人手もお金も足りない、あるのは情熱のみという厳しい現状が待っていました。なにもなければ知恵を絞るしかない。そう痛感した七村さんはそこから、関西弁で「工夫する」の意である『ひねらんかい』という社是を思いついたそうです。
一方、当時の社内で関西人だったのは七村さんたった1人であり、関西弁の社是を恥ずかしがられたと言います。そんな社員に対し七村さんは「『ひねらんかい』をかっこいいと思ってもらえるか否かは自分たち次第だ」と言ったそうです。こうして『ひねらんかい』という特徴的な社是が生まれたのです。

価値観を変えてくれた小学校の先生

幼少期で印象に残っているエピソードを伺うと、小学5年生のときのことを教えていただきました。当時、骨折で2週間ほど学校を休んだ七村さん。久々の学校では授業についていけませんでした。そんな中ある授業で「解答はAと思うかBと思うか」の挙手を求められました。みんながAに挙手する中、Bに手を挙げたのは七村さん1人。結局その正解はBだったのですが、そのとき担任の先生に、みんながAに手を挙げる中、流されることなく1人Bと表現出来たことをとても褒められたそうです。「正しいかどうかではなく、正しいと思うことを表現できるかどうか」。それが出来る生き方をした方が良いと励まされた七村さんは、この価値観が生き方のベースになったそうです。今自分が思っていることを表現する重要性。正しいかどうかは学んでいけばいいと七村さんは言います。

過去を肯定して生きる

母子家庭で貧しい暮らしをしていた七村さん。子供の頃は他人に嫉妬し、「なんで俺が」と思うこともあったそうです。しかし、今ある自分は、プラスの部分もマイナスの部分もあっての自分。そう考えるようになると、「過去のせい」から「過去のおかげ」と捉えられるようになっていったそうです。また過去を肯定することで、感謝の気持ちも芽生えたと言います。
「物事の捉え方次第で行動は変わる」と七村さんは言います。変えられない「過去」、せっかくならポジティブに捉えた方が自分にとってプラスになるのです。

所持金200円、食い繋いだ大学1年春

大学入学にあたり山口県に引っ越してきた七村さん。大学費用・生活費はすべて自腹。授業料を払って一息つく間もなく、手元に残ったお金は200円しかなくなっていました。急いでバイトを探しますが、面接に行く交通費すら足りません。七村さんは同じ山口大学の新入生と思われる人に学生証を見せ、お金を忘れたから貸してくれないかとお願いし、その場を乗り越えました。しかし、寮費の支払いも迫っており、悩んだ七村さんは、バイト先の面接に行き、バイト代の前借りをお願いしました。もちろん不審がられ中々うまくいきません。しかしあるお店の面接で、現状の危機を正直に語る七村さんの姿に寄り添ってくれた店長が、個人的にお金を貸してくれたのです。七村さんはここでもまた、食い繋ぐことが出来たのです。
ハードな体験談をお持ちの七村さんですが、当時の不安を伺うと、「お金がなくてもなんとかなると思っていた節があった」と振り返ります。「人は助けてくれる」、その言葉から他者への感謝と信頼がうかがえます。やる前から無理だと決めつけない七村さんのスタンスが終始見受けられました。

社員に幸せになって欲しいという自然な欲求

七村さんのお話からは終始、社員の満足度を優先する姿勢がうかがえます。大きな成功を掴んだにも関わらずその謙虚な姿勢を崩さない理由を尋ねると、「設立当初は家族を幸せにすることを考えていた。その後利潤が生じると、社員、社員の家族、顧客、株主・・・と、幸せにしたい対象の幅が広がっていった」と答えました。
そこには社員を大事にしようという特別な意識があるわけではなく、社員に幸せになって欲しいという七村さんの自然な欲求がありました。セプテーニグループでは、通常なら顧客に送るお中元を、感謝の気持ちを込めて社員の家族に送っているそうです。こうした家族への配慮が結果的に、社員の働きがいに繋がり、パフォーマンスがアップするという好循環を生んでいるのです。

性善説の組織経営

七村さんの性善説の見解は独創的で、人が性善の人と性悪の人に分かれているわけではないと考えています。人は誰しも性善の要素と性悪の要素を持っているのです。そしてその比率が、人の考え方を左右しているといいます。悪い集団に所属していると、人はそこから排除されることを恐れ、その悪い価値観を受け入れていきます。人はどこの組織に加わるかで変わるのです。これは会社にも当てはまると七村さんは言います。性善の組織の中で性悪で居続けることはとても苦しいことであり、逆も然りです。会社を良くしたいと思う気持ちを持つ人が多ければその方向に向かう。皆が意見を持ちながら積極的に働いていれば、考えなしに働くことは難しく、そこから誰もが提案しやすい環境が形成されると七村さんは言います。構えることなく誰もが提案できる環境は非常に重要であり、独自の性善説の組織経営がそれを支えているのです。

後輩に伝えたいこと

OBである七村さんに、在学生へのメッセージをお願いすると、「学生の間は時間があるので好きなことをやって貰いたい。“死ぬこと以外かすり傷*1”の精神で、様々なことにチャレンジした方がいい」と笑顔でお答えいただきました。
現代人にはリスクもリターンもない「失望最小化*2」傾向があります。しかしこれでは思考回路も行動も萎縮してしまいます。だから、ハイリスク・ハイリターンの「希望最大化*2」を目指して欲しい、そう七村さんは言います。なぜこう言い切れるのか。それは『生きている時間が長ければ長いほど、リカバー出来るチャンスがあるから、行動は早めに行うべき』という考えがありました。
「チャレンジしなければ何もない。その失敗は財産に。危険の匂いを嗅ぎ分ける力を身に付けるためにも、様々なトライアンドエラーをすべき。若さは失敗できる証。在学生には様々なチャレンジをして欲しい」と力強くこたえました。

*1 箕輪厚介氏『死ぬこと以外かすり傷』 (マガジンハウス、2018年)より引用
*2 藤野英人氏『投資バカの思考法』(SBクリエイティブ、2015年)より引用