山口大学医学部眼科山口大学大学院医学系研究科眼科学

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ぶどう膜炎Uveitis

ぶどう膜炎とは

眼内の組織である虹彩・毛様体・脈絡膜をまとめて「ぶどう膜」と言います。変わった名前ですが、組織が血管に富み黒色で、ぶどうの色に似ていることから名づけられました。「ぶどう膜炎」とは、現在は広い意味で眼内の全ての炎症性疾患の総称となっています。
症状はさまざまで、視力低下(視力が下がる)、充血(眼が赤い)、眼痛(眼が痛い)、霧視(かすみがかかって見える・曇って見える)、飛蚊症(蚊が飛んでいるように見える)、羞明(まぶしい)、歪視(ゆがんでみえる)などが代表的な症状です。
片目の場合も両目の場合もあり、重症度も無治療ですむもの、点眼治療のみで視力に影響なく過ごせる軽度のものから、入院点滴治療や眼内の手術を行わないと失明してしまう重度のものまでさまざまです。
日本国内では、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病、ベーチェット病の3疾患が頻度の高い「3大ぶどう膜炎」として知られています。
当科ではこれらのぶどう膜炎をはじめ、多くの症例の治療経験を有し治療にあたっています。

ぶどう膜炎の診断

原因は多種多様であり、時代や地域、国によっても異なりますが、大きく分けて感染によるもの、感染でないものにわけられます。
ぶどう膜炎の診断は、片眼か両眼か、炎症の中心となっている場所はどこか、炎症の性状はどの病気に似ているかなど、診察や画像所見から得られる情報から推理して診断を行います。眼科で行う画像検査だけでなく、採血やCT・MRI検査、眼内液を採取して行う培養検査やPCR検査などが診断のために必要となることもあります。
当科では、患者さんの炎症の性状・程度に応じて、必要な検査を吟味し適切に選択したうえで、診断を行います。ただしたくさんの検査を行っても、全国統計で3~5割は確定診断が得られないとされています。初診時に診断がわからず、数か月~数年の経過観察により総合的に診断がわかるものもあります。そのため確定診断が得られない場合でも、状況に応じて最も適切と思われる治療を行っていきます。

ぶどう膜炎の治療

治療は点眼薬・局所注射・内服薬・点滴などの薬物治療が基本になり、診断目的や合併症に対する手術治療を行うこともあります。
感染性ぶどう膜炎であれば炎症の原因となっている細菌・ウイルス・真菌などに対する抗感染症治療が主体となり、非感染性ぶどう膜炎であれば炎症そのものを抑える抗炎症治療が主体となります。
ぶどう膜炎は「炎」の字のごとく、眼の中で火事が起きている状態と言えます。火事を消すための水・消防車にあたる代表的な治療薬がステロイド薬となります。
ステロイド薬は強力な薬ですが、副作用も多く、用法・用量や使用中の管理が非常に重要です。大火事にバケツの水をかけ続けても鎮火しませんし、ボヤ程度の火事に消防車を出動させ消化すると、家具が水浸しになり使えなくなります。それぞれの症例に応じて適切な量を、適切なタイミングで使わなければなりません。
当科ではステロイド薬を基本として、その他の治療薬(免疫抑制剤、生物学的製剤など)を症例に応じて選択し使用します。
例として、Vogt-小柳-原田病に対する入院ステロイドパルス(点滴)治療、ベーチェット病に対するインフリキシマブ外来点滴治療なども行っております。
ぶどう膜炎は再発する例も多く、一度診断・治療を受けたら長い年月をかけて付き合っていくべき病気ともいえます。
しかし一生大学病院にかからないといけないわけではありません。当科では炎症がひどい時の診断・治療の舵取りを行い、かかりつけ医と連携をして、炎症の長期コントロールを図るお手伝いをさせていただきます。

最後に

ぶどう膜炎の原因や増悪因子についてはわかっていないことも多いのですが、ひとつ確実に悪くなる原因がわかっています。それは喫煙です。
喫煙により、ぶどう膜炎のリスクは3倍以上高くなるといわれています。これを読んでいるあなたがぶどう膜炎と言われたことがあり、かつ喫煙をしているようでしたら、今すぐ必ず禁煙してください。禁煙のみでぶどう膜炎が軽快する症例もあります。視覚は失って初めてその大切さがわかります。「禁煙はしたくない、でも病気は治療してほしい」という考えではぶどう膜炎は治療できません。
視覚は失ってその大切さがわかります。あなたの視機能が低下することで、あなた自身と、あなたの大切な人の生活や人生に支障が出ることをよく理解し禁煙しましょう。

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