20201221日(月)に、大学リーグやまぐち・山口大学主催 大学マネジメントセミナー2020 inやまぐち『大学マネジメントのためのマインドセット』を、学内外から120名を超える参加者を集め、Zoomによるオンライン聴講及び吉田キャンパス・大学会館2階会議室による会場聴講を併用したハイブリット型セミナーにて開催した。オンライン聴講を可能としたため、東北から沖縄にかけて全国各地の教職員が参加した。本セミナーは、大学リーグやまぐち、山口大学の共同主催、大学マネジメント研究会、大学行政管理学会中国・四国地区研究会の共催で実施された。

 冒頭、多賀谷 勇治 山口大学 総務企画部長より開会挨拶があり、大学経営における教職協働の重要性が謳われる中で、所属大学を超えた大学関係者の議論や情報交流に期待が寄せられた。

 基調講演では、まず、関西大学管財局管財課職員 / 日本ピア・サポート学会理事 松田 優一 氏より、「ピア・サポートを通した学び合い・助け合い~学生支援と働き方について~」と題して講演があった。ピア・サポートは教育活動であって、対人援助の知識と技術を学び、実践することで、援助する方も援助される方も人間力を高めることができ、ボランティアとは異なる。日本では、いじめが社会問題化した1990年代から学校現場を中心にピア・サポートが注目され始め、今日では大学生支援にも活用され、広がりを見せている。ピア・サポートによる「自立を促し、エンパワーを生む」コンセプトは、大学教職員の働き方における協働意識に適用でき、大学マネジメント力の向上に役立つことを意識させる講演となった。

 次に、筑波大学研究推進部外部資金課主幹 / URA 池田 一郎 氏より、「ファンドレイジング意識を持った提案力・行動力とは?」と題して講演があった。ファンドレイジングの基本的な考え方を紹介しながら、大学等も広義の意味の"NPO"と捉えながら、学生を含めたステークホルダーのため、社会貢献のために、必要とされる資金を獲得し、新たなイノベーションを起こしていく意識や行動力の必要性を訴えた。筑波大学での具体的な取組事例を踏まえながら、聴く側にとって非常に説得力のある講演となった。

 最後に、大阪府立大学 副学長(統括) 高橋 哲也 氏より、「自律的な内部質保証を育むには~その仕組みづくりと意識づくりを学ぶ~」と題して講演があった。内部質保証の定義を説明しながら、学修成果についての内部質保証の主体はカリキュラムや卒業要件を決める学科であると強調した。その観点から、大阪府立大学では、ボトムアップでの議論を醸成する教育戦略室会議の設置や内部質保証のためのスタートアップ事業の導入を通して、学科が主体となった自律的な内部質保証体制の整備を進めている説明があり、各大学での関心テーマである自律的な内部質保証の確立にとって示唆に富む講演となった。

 後半では、林 透 教学マネジメント室 副室長の進行のもと、参加者からのチャットによる質問に講師が回答する形で全体共有を行った。参加者からは「大学職員に対して経営意識をどのように養っていったらよいのか」「ピア・サポートの取組を充実する上で、工夫している点はどのようなことか」「産学連携活動等が大学教員にとって評価に対象になっておらず、働きかけにくい側面があるが、どのように考えるか」「学修成果の効果的な測定方法のあり方」などの質問があった。各講師からは、「大学組織は複雑体であるが、まずは、自分の大学を良く知ることが大事であり、そこから色々なことが見えてくる」「学生から見て、教職員がナナメの立場から温かく対応することを通して、学生自身の自主性を育むようにする」「何のための研究なのか、誰のための研究なのかを起点に研究者自身や研究支援者が考えていくことが大事である」「学修成果の測定方法について、上から押し付けるのではなく、組織として納得感のあるものを導入・定着していく意識が大事である」とのコメントがあり、これからの大学マネジメントのためのマインドセットについて相互に考え、認識を強くする有意義な意見交換となった

 参加者アンケート結果から満足度の高いセミナーとなり、今後も同様のオンラインセミナーを望むコメントも寄せられ、更なる充実を図っていくこととした。 

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