041 他者のキャリアを尊重し、理解する態度を養う。
2025.09.03
「他者のキャリアを尊重し、理解する態度を養う。」──これは、私のキャリア教育の目標の一つです。意外に思われるかもしれませんが、私はこの点を極めて重視しています。
もちろん、自己のキャリアをどう築くか、つまり、自己分析や業界・企業研究の手法を学ぶことは、キャリア教育の基本です。自分が何者になりたいのか、何が向いているのかを深く掘り下げることは、誰もが実践すべき課題でしょう。
しかし、キャリアを学ぶことは、それだけに留まるべきではありません。私が真に伝えたいのは、「他者のキャリアに想いを馳せられる人になること」です。私たちは将来、職場で部下を指導する立場になるかもしれません。あるいは、家庭において、パートナーや子どもたちとともに、生き方、働き方、そして人生の選択について深く向き合う時が来るでしょう。特に子どもは、親とは異なる個性、志向、能力を持つ独立した存在です。子どもの幸福を心から願うからこそ、そのキャリア選択に良き助言を与えるためには、自分とは異なる価値観を理解する姿勢が不可欠となります。
このため、世の中にどのような仕事が存在し、社会がどのような仕組みで動いているのか、といった知識を幅広く学ぶ必要があります。そして、先人たちが築き上げてきたキャリアの理論は、皆さんの思考を深める上で、きっと力強い助けとなるはずです。
この考えは、とりわけ教員を志す学生に強調しています。彼らは将来、子どもたちにキャリアを教える立場となりますが、子どもたちの進む道は決して一つではありません。学校の先生という職業の素晴らしさを伝えるだけでは、未来を担う彼らの多様な可能性を応援するには不十分です。だからこそ大学生である今、様々な働き方や生き方を学び、他者を深く理解する姿勢を身につけることが求められるのです。
キャリア教育の真価は、他者の幸福をも願える人へと成長することにあると私は信じています。そのため、キャリア教育は単なる職業選択の指南ではなく、人としての教養を育むための重要な学問であると位置づけたい。すべての人にキャリア教育を! 教養としてのキャリア教育を、大切にしたいと思っています。
キャリアセンターコラム 2025. 9.3 平尾元彦